所長ブログ

医療法人のメリット・デメリット

投稿者: shigeru yamada [ 2017 年 4 月 10 日 ]
カテゴリ: 個人事業と法人事業の比較

先日クライアント様のご依頼により医療法人のメリット・デメリット等を検討する機会がありましたのでシェアさせて戴きます。


【医療法人の設立形態及び運営機関の設定内容】

〇通常医療法人は「社団」医療法人として設立するケースが多い(「財団」医療法人は大型の病院など全体の1%程度)

〇最高意思決定機関 → 社員総会(株式会社の株主総会に該当)

〇執行機関 → 理事会(株式会社の取締役会に該当)

〇監査機関 → 監事(株式会社の監査役に該当)

〇理事 原則3名以上
 ※医療法人と取引のある営利法人(MS法人等)の役員が、医療法人の理事や監事に就任し経営に参画することは、医療法人の非営利性の観点から適当でないとされる(運営管理指導要綱)

〇監事 原則1名以上
 ※監事は理事の親族等と特殊関係がない者である必要がある(運営管理指導要綱)
 ※顧問税理士も適当でないとされる
 ※医療法人の理事や職員を兼任することも不可(医療法48)


【医療法人のメリット】
 1.最高税率が個人は60%(所得税45%、住民税10%、事業税5%)であるのに対し、医療法人は35%弱と、25%程の負担減となる可能性がある

2.事業所得が給与所得となり「給与所得控除」という所得控除が適用されるため、一般的に個人事業よりも課税対象となる所得が圧縮される
  ※但し給与所得控除の上限は年220万円で、青色申告特別控除65万円は適用不可となる

3.親族を理事や監事に就任させることにより、各人へ役員報酬を支払うことが可能となり、所得を分散させることができる
  ※医療法人と取引のある他の営利法人との兼務は不可で名義のみの関与も不可

4.理事や監事に退職金を支払うことが可能となる
  ※個人事業の場合には事業主本人や扶養親族等への退職金の支払いは不可能

5.生命保険料の半額程度は経費計上可能となるため、退職金の準備が比較的容易となる
  ※従業員を生命保険(養老保険)に加入させ退職金に備えることも可能

6.消費税の納税義務が1期~2期免除される
  ※原則は2期だが一定の制約あり

7.分院の開設が可能となる

8.税金及び事業運営の両面から後継者への相続・事業承継対策として有効

9.経費として認められる範囲が広くなる(生命保険や社宅契約も可能)
  ※事業主本人の社員旅行の旅費、健康診断の健診費等
  ※本来個人事業の経費として認められる範囲は狭く、例えば情報交換のためのゴルフ費用が否認された判例などもある

10.決算期をある程度自由に設定可能
  ※但し、医療法53条では3月決算とする旨が指定されているため、自治体によっては3月決算に限定される場合もある


【医療法人のデメリット】
1.医療法人解散時に残余財産を国や地方公共団体、他の医療法人へ寄付する必要が生じる
  ※平成19年4月1日以前に設立された「持分あり」の医療法人であれば当初の出資者に残余財産が分配される
  ※解散時に残余財産がない場合には贈与の問題は生じない
  ※医療法人に帰属する財産は相続財産とはならないので、相続税が生じないというメリットはある

2.社会保険への加入が事業主(理事長)も強制となる

3.医療法人の理事は小規模企業共済への加入が不可能
  ※既払い分は個人事業の廃業に該当する(共済金A)ので満額返金される
  ※返戻金は退職所得扱いとなるため所得税や住民税の負担は少ない
  ※個人事業の廃業届(税務署)を添付して申請する

4.セーフティー共済(中小企業倒産防止掛金)への加入が出来ない
  ※個人事業であれば加入は可能で、最大で年240万円、累積で800万円まで経費計上可能
  ※従業員の退職金準備のための「中小企業退職金共済(中退共)」への加入は可能

5.都道府県に対し定款の提出、及び毎年の事業報告書や決算書、監査報告書の提出が義務となり、個人に比べ事務負担が増える
  ※上記の情報は広く一般に公開(過去3年分)されるため、開示請求をすれば近隣医院や知人などの目に触れる可能性もある

6.毎年登記変更(純資産額の変更)が必要であり、2年に一度は役員変更(重任含む)も必要であるため、司法書士に対する報酬が発生(登録免許税は非課税)する

7.医療法人として再度保健所の検査が必要となる
  ※個人診療所は廃業手続きが必要

8.株式会社と異なり、利益(剰余金)の配当はできない

9.MS法人との取引内容を都道府県に厳しくチェックされる
  ※MS法人を活用し特別の利益の上乗せ等をすることにより、実質的な剰余金の分配が可能であるため
  ※平成29年4月2日以降に開始する事業年度より、MS法人との取引については年間取引額等を都道府県へ届け出る必要がある

10.医療法人設立に期間とコストがかかる
  ※設立までに要する期間は6ヶ月~8ヶ月程、コストは100万円程

11.個人事業に比べ事務が複雑になるため税理士報酬を含めランニングコストが上がるケースが多い

12.交際費は年800万円を超える部分は経費とならない
  ※但し個人事業よりも経費として認められる範囲は一般的に広がる

13.役員報酬は一度決定すると決算月までの一年間は変更できない

14.役員に賞与を支給しても原則経費とならない。(一部例外あり)

15.クリニックの家主や金融機関、リース会社などに法人化する旨を事前に連絡し名義変更の承認を得る必要がある
  ※名義変更には手間がかかり、場合によっては名義変更手数料が発生する

16.新しく法人口座を開設するため、光熱費などは引落口座の変更手続きが必要となる



以上



【設立までのスケジュール(東京都のケース)】

各都道府県により異なるが、仮申請から許可書交付まで6ヶ月程度の期間を要する

医療法人設立説明会(参加せずとも設立手続きは可能) 
※年1回 7月上旬(FAXによる事前申込み)

定款の作成

設立総会の開催

設立許可申請書の作成

設立許可申請書の内容についての審査(仮申請)

設立許可申請書の提出(本申請) ※8月下旬から9月上旬

医療審議会への諮問 ※翌年1月下旬~2月初旬

答申

設立許可書交付 ※翌年2月中旬~2月下旬

設立登記申請書類の作成及び申請

登記完了(設立)

※平成29年度の説明会や正確な申請可能日等は現在未定(5月末日までには公表される予定)

以上



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